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Cymruのお喋り

Cymruのお喋り

RS異聞記 1

8万HIT記念

物書きの性でございましょうか・・・


頭の中に浮かぶのは

神官姿のカムロ


選べぬ境遇に生まれてしまった
我儘お嬢様のディオ


私なら
どんな風に書くのかしら・・・

そう思った瞬間

彼女たちが動き出しました。


このような機会を与えてくださいましたお二人に
改めて厚く御礼申し上げます。



*このお話は
上記2つのお話と整合性はございません(涙目)


-------------------------------------------------
フランデル大陸の冒険者なら聞いたことがあるであろう
「RED STONE」の噂

最近、そこに新たな噂が付け加えられていた。

選ばれし冒険者がこの「RED STONE」の謎に近づき
恐ろしい”赤い悪魔”と遭遇したらしいと---


ここは、
近郊に広大な農園地帯を有する神聖都市アウグスタ。

その名のとおり宗教色の色濃い都市。

街のすぐ近くに凶暴なモンスターが出没する場所が多い
フランデル大陸の中では比較的平和な都市。

それは、
この世界の主役
冒険者たちから見ればあまり魅力のある都市ではないということになろう。


「それにいたしましても、良い風が入りますこと・・・」

潤んだ瞳でステンドグラスがあった所を見つめているのは、
取りたてて特徴のない女性。

身に着けている法衣の聖印を見落とせば、
ただのシスターにしか見えない。

「どういたしましょうか・・・?」
おずおずと問いかける若いシスターに
微かに小首をかしげ視線を向けた彼女の瞳には
何やら楽しげな様子が浮かんでいた。

「これも神様のご配慮でございますわ」

割れたステンドグラスの立替修理代1000万G-100万G
必ず返してくれることはわかっている
けれど、それがいつになるのかは
正に神のみぞ知る・・・

「私たちも稼がないといけませんわね♪」

近郊に広大な農園地帯を有する神聖都市アウグスタ。

住人には農業を営む者が多い。

彼らは朝が早い分、夕方には仕事を終え
ゆったりと過ごす姿が街のあちらこちらで見かけられる。

「改装記念特別メニューはじめました^^」

教会の門に掲げられた看板に
足を止める人々

「神官さま、どこを改装なさったんですか???」

「はい、ステンドグラスをはずして空の鳥たちも
お客様にいらして下されるようにいたしました♪」

さらっと言いながら
しっかり客引きに成功している高位神官って・・・


教会の中庭にはテーブルがセットされ、
”お代はお気持ちでお願いいたします”
と書いた箱を首から提げたシスターたちが
お茶とスコーン、プチケーキ、クッキーやフィンガーサンドをふるまっていた。

甘い香りがそこここにたちこめる。


どっしゃ~~~んがらがらどーーーーん!!!


人々が凍りついたように動きを止める。

「神官さま~~~!!!」

聖堂にいたシスターが
物凄い勢いで飛び出してきた。

「どうなさいましたの?!」
口調はのんびりしているが、すっかり(涙目)の神官
相当慌てている証拠だ。

「空から赤い悪魔が・・・割れた窓を通って・・・
私と目が合いましたら、火を吹いて・・・」


近頃噂の
”赤い悪魔”の言葉に
一同騒然となる。


食器の割れる音
椅子やテーブルの倒れる音
悲鳴


「お静かに!」
大きくはないがよく通る声が
中庭に響き渡った。

そこには法衣を脱ぎ捨てた
神官の姿

なんと
下に纏っていたのはミスリルの鎧
法衣の内ポケットに入れていた
装備一式を身に着けると
そこにいるのはまぎれもなく冒険者

それが合図であったように
数人のシスターが彼女に続く

飛び交うヒール
エビ・ブレ

その中でも一際輝くエビブレを身に纏い
冒険者としての二つ名の通り
その瞳に涙をためて祈り続ける
「紅涙の女神官」Cymru


「皆は分担してすべての方にエビブレ・ミラーをお願いいたします。
私たちの命にかえても皆様をお守りするよう願います」



聖堂の入り口に向かいゆっくりと進むCymru


水を打ったような中庭に
ピタピタという微かな足音が聞こえはじめ・・・

だんだんと大きくなる。


Cymruはもう一度祈り
歩を進めた。

ちらりと見えた赤い影



次の瞬間
それは姿を現した。

羽が生え全身が真っ赤な・・・


えっ?!


身長70cm
胴回り60cm位の・・・


σ(=^‥^=)カムロだじょ♪

・・・
・・・
・・・

Cymru(泣)


「お邪魔しますだじょ♪」


(..=) (=・・=) (= ¨ )くんくん・・・


「いい匂いだじょ~~~♪」


トテトテトテと駆け出し
テーブルに残っていた食べ物に
突進~~~

「いただきますだじょ♪」

短く小さい手をちょんと合わせ
きちんと頭をたれてご挨拶

「うまいじょ~~~♪」


「あの・・・・(大泣)」
神官の姿に戻ったCymruがおそるおそる声をかけた。

「ごちそうさまだじょ♪」

σ(=^‥^=)カムロだじょ♪

「あ・・・Cymruと申します(涙目)」

(。・_・。)ノよろしくだじょ♪

「こ、こちらこそよろしくお願いいたします(泣)」

~(= ^・・^)=o 握手だじょ♪

「あ、はい、ありがとうございます(大泣)」


放心状態で唖然としている一同にも
挨拶して回ると
カムロと名乗った赤い生き物は
中庭の芝生に長々と寝そべり
お夕寝をはじめた。


この日からこの教会に
何やら赤い生き物が住みついた。


本人の申告によると
由緒あるエンシェントドラゴンの
幼生らしい。



「神官さま・・・」

「はい?」

「また食べ物が足りませんわ」

「・・・神は耐えられない試練はお与えになりません
皆で頑張りましょう(号泣)」
------------------------------------------
「邪魔するよ~」

教会の入り口に響き渡る大声


シスターの一人が慌てて声の主に近づく。


「カなんとかだじょ♪って赤いちんちくりんがいるってのは、ここかい?」

赤銅色に日焼けし、見上げるくらいに背の高い男は快活に笑った。


「あ、あの・・・」

どぎまぎと答えぬシスター


と、奥から響く声

「ごきげんよう、漁師様でいらっしゃいますわね。
ようこそ私たちの教会へ」

ゆったりとした動作で静かに近づくCymru


「ご、ごきげんよう?!・・・こちとらそんな柄じゃねえよ」

苦笑しながら、背負っていた荷物をどすんとおろす。

「ほら、受け取ってくれ」


ピチピチと動いているのは数種類の魚・魚・魚~♪


「これは・・・?」

男の話によると---


いつの間にか船に乗っていた
赤いちんちくりん。


海の真ん中で放り出すわけにもいかず
そのまま漁に出ると

(..=) (=・・=) (= ¨ )キョロキョロ・・・

”こっちだじょ♪”


(..=) (=・・=) (= ¨ )キョロキョロ・・・

”次、あっちだじょ♪”

示す先には必ず魚群。

近来まれに見る大漁だったという。

船いっぱいにはねる魚の何匹かを平らげているのを
仲間の漁師が見ているが、自分が見たときには
もう姿がなかった。

港で
ここに住んでいるらしいという噂を聞いて
訪ねてみたという。


「少しだが、礼だ。赤いのが戻ったら、また頼むと言っておいてくれ」


「ありがとうございます(涙目)・・・お茶でもいかがでしょうか?」


「おいおい、勘弁してくれ。仕事が終わったんでね、これからけがはえているほうをいただくんだ」


一同???


「・・・ここじゃ通じないか」男は吹き出した。「”おちゃ”に”け”がついて」


「あ、お酒ですわね♪」


「お、神官さんのわりに話はやいね~。じゃ、そういうこった」

踵を返し手を振りながら、男は帰っていった。


「あ、お名前を・・・」


相手の素早い動作に名前を聞くこと叶わず・・・



「あの子、本当に由緒正しいドラゴンかもしれませんわね」

食べきれないくらいの魚を前に、シスターたちも溜息混じりに頷いた。

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異形・・・

それはともすれば
社会からは排除の対象となる

ここRSの世界では
異形は当たり前

少々怖いが実に美しい女性が
突然、マントと怪しげなマスクをかぶり
身長1/2になって、
ア●レちゃん走りで去って行く。

メ○モちゃんも真っ青、子供にも大人にもなり、
更には/(=・x・=)\や
エレ◎ンタ☆ジュレ○ドのように武器に変身する者までいる。

同じ人間でありながら
狼の外見を持ち
パンツの色は青がいいか緑がいいかと
議論している者がいる。

普段はビショップだが
何かの折には片羽の天使に変化し
フラフラと飛んだり、
瞬間移動・町移動ポタを出現させる
怪しい者たちもいる。


それより何より・・・

俗にペットと呼ばれるモンスターたち。

圧倒的に多いのはファミリアという種族だが
古都やアリアンといった大都市になると
亀、イカ、熊、鞭を持った怪しいお姉さん、
真昼間からヴァンパイア、ゴースト、骸骨・・・等々。

そこに今更
赤いチンチクリンが増えたところで
どうということはない。

自称、由緒あるエンシェントドラゴンこと
σ(=^‥^=)カムロだじょ♪
はあっという間にアウグの町になじんだ。

「さあさ、朝市名物。
ドラゴンスルメにドラゴン焼きもろこしだよ。
いらっしゃい、いらっしゃい」

各々が収穫物を持ち寄り開く朝市
この世界には町から町へ簡単に移動できる
仕組みがあるため
この市のたつ日にはフランドル大陸中から
人々が集まってくる。

その市の一角に黒山の人だかり、
覗いてみると・・・


長い、物干し竿のようなものから
針金でぶら下がっているのは
スルメとトウモロコシ
ずらりと並んだそれらの周りを
なんとも楽しげに火を吹きながら駆けずり回る
赤いドラゴン(自称)

もともとが食いしん坊らしく
火加減、焼き加減にはうるさい♪

こんがり焼けていくそれらからは
なんとも香ばしい香りが漂っていた。

「おくれ」
「こっちも、お願い」

焼きあがる端から飛ぶように売れていく。

山と積まれていたスルメもトウモロコシも
あっという間に完売。

「お疲れさま、ありがとよ」

お礼にと特大トウモロコシと厳選スルメをもらい

「ありりだじょ~~~」と大喜びのカムロ
早速好みの焼き加減に仕上げ、いただきま~~~す(^人^)

「いや、あんたが落ちてきたときは、
てっきり”赤い悪魔”かとたまげたが、
さしずめ”赤いあらま”ってとこだね」

大柄の女性に頭を撫でられ
ご満悦のカムロ。

「帰るときに、この辺の野菜ももっておいき
神官さまたちに食べてもらっとくれ」


(=^‥^=)ノ

籠をひとつ借りて、その中に野菜をつめ
頭の上にひょいと乗せて、トコトコ歩き出すカムロ。

その動きに子供たちが集まってくる。

教会の塔からその様子を見ていたCymruは
聖堂へと移動し、数人のシスターに
子供たちへのおやつの支度を依頼、
自分は、
少々不安定な動きのカムロの手伝いをしようと外へ出た。

と、
一羽の鳩が舞い降り
くわえていた手紙を落とす。

何気ない様子でそれを拾い
踵をかえすCymru

カムロと子供たちが教会に到着したとき
迎えてくれたのはシスターとおやつ。

Cymruの姿はどこにもなかった。
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2m四方位の扉も窓もない
ただ、壁の一箇所が羽目板となっている
教会の懺悔室のような部屋で
Cymruは天使からビショの姿に戻った。


「お待たせいたしました」

ミスリルの鎧、スキュトゥム、棍棒を装備した姿は
首の聖印つきのお守りがなければ
よく見るビショップの一人でしかない。

が、ここは某国の地下深く。

特別の通行証を持つもののみが
一見、柱のようなポタを通り
来る事が出来る場所。


いつもならCymruたちがいる羽目板の向こうから声がした。

「よく参られた・・・今度は少々面倒な依頼じゃ」

「御意」

「アンデットたちを滅すること。他の者たちを守ること。頼んだぞ」

「御意」

「・・・これは蛇足じゃが・・・」

「?」

「今回、火力は余り気味のようじゃな」

「かしこまりました」

Cymruは天使の姿になり

「わが身を望む場所へといざない給え・・・エバキュエイション!」

と唱え、その場から消えた。

「あ・・・」声の主がしまったという顔をした。

「酔い止め、持ってまいれと言うのを忘れたのじゃ・・・
ま、ビショならレストレイションでなんとかするであろう♪」

含み笑いを残し、声の主はその姿を天使に変える。


次の瞬間、そこにはただ、冷たい空間が広がるだけとなった。



ハノブに現れたCymruは銀行へ向かった。
どちらかと言えば閑散としたハノブ、しかも天使の姿のままなのは
その方がいろいろな意味で身軽であるから。

銀行の入り口で
Cymruはもう一度、手紙に目を通す。



はぁ~い、カムちゃん元気してる~?

あ、悪い予感してるでしょ?
あったり~~~

でもね、でもねのワンコ背中に乗れるよ~ん

やるよね?ね?ね?

答えは聞いてない

じゃ、いつものとこで待ってるよ~~~ん




特徴のある文体
署名などなくとも
差し出し主のわかる手紙

今まで、この手紙の主のせいで
何度お星様になりかけたことか・・・

Cymruは思わず(涙目)になる。

でも
今度は”ワンコの背中に乗れる”お仕事。

わくわくどきどきしながら
いそいそと装備を整えるCymru・・・


その様子を
とある場所から水晶球で眺め、お茶を飲む手紙の主

「学習能力のない子じゃのう・・・」
カップから立ち上る湯気が天空に消えていった。
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ストレートのダージリンティーを一口

横のトレイからバラ・ブリスを一切れ

優雅なティータイム

のはずであったが・・・



足元で何やらごそごそ動く影

「ここに侵入したじゃと?!」ガチャンとカップを置き、立ち上がる。

(=^‥^=)ノ

「なにやつじゃ!」


σ(=^‥^=)カムロだじょ♪


「そなた・・・」女性は目を細め、足元で動くものを見つめた。


~(= ^・・^)=o 握手だじょ♪


かがんで握手をする。
「ようこそまいられた・・・ドラゴンの王となるものよ」




「お呼びでございますか?」

全身黒ずくめの男性が音もなく現れた。

俗にシーフと呼ばれる彼らであるが、
実態は、秘密裡での情報収集、
公にはできない特殊任務のために働いている。

中にはトラップや錠あけのスペシャリストもおり
ある筋の者たちには実に重宝な存在である。



彼の目の前には立派なテーブル。

そこに座っているのは
見事なシルクのガウンを身に纏った女性と
全身真っ赤、身長70cm、胴回り60cm位
申し訳程度に羽が生え、ギョロ目で耳が垂れ
手足が短く口がやけに大きく
そこから、これも真っ赤な舌を出した生き物。

で、その赤い生き物だが・・・

全身全霊でお茶とバラ・ブリスを平らげている。


それを一瞥し、表情を変えぬシーフ。


「ほう、さすがじゃな」
女性は満足げに微笑みながらいくつか指示を出し、
シーフの気配が消えるとテーブルに向き直った。
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かの「RED STONE」伝説

それが単なる伝説ではないということを
この女性は知っていた。


”「RED STONE」の中で眠っている火の神獣の「ひな」の孵化の時が近づいてきている”という噂が現実であること

更には、もうひとつの伝説

”赤き龍の伝説”が真実であることも


「そなたらには迷惑をかけたのう・・・」



「赤き龍」伝説

ある次元で巨大な力が失われたとき
全宇宙の均衡を保つため
他次元でそれに匹敵する力を持つものが
消滅する。

火の神獣が消滅したため
時空に生じた歪みは
全く別次元の大いなる力
「ドラゴン」と呼ばれる者たちを巻き込むこととなった。

突然消えたドラゴンの王。

だが、王が死んだのではないことを
ドラゴンに仕える「護龍の民」と呼ばれる一族は知っていた。

ドラゴンの王の残留思念は
この異変の原因となる力が復活するときに
自らも復活することを約束した。

そして・・・

再生のため
この異変の原因を突き止め
解決することを「護龍の民」に命じた。

王の残留思念は幾千万の光となり
「護龍の民」一族の体内に消えた。

その光は
女たちにはドラゴンの生命力を体内に育み
愛情と知識を継承することを、

男たちには想いを形にし、
ドラゴンの力を継承することを命じた。

体内にドラゴンの力を宿した一族は
原因探求のため
あらゆる時代・次元に飛んだ。

女たちのほとんどはその力を体内に保ち
人並みはずれた治癒と浄化の能力を発揮した

男たちのほとんどは戦闘能力のみを体内に残し
「卵」もしくは「石」の形態にドラゴンの生命力を封印
それを宝として代々継承していった。

が、「卵」もしくは「石」は奪われ、
失われることが多かった。

「護龍の民」の手を離れたそれは不完全なまま孵化し
ドラゴンとは言い難い容姿と能力で、その命を落としていった。

この事態を解決するために
「卵」もしくは「石」は
「護龍の民」の血を引く者のみが見え
入ることが出来る場所に隠された。

孵化してしまった幼生たちは、
「護龍の民」たちの手で懸命に集められ、蘇生され、
かなりの数が再び「卵」もしくは「石」の形態に戻された。

しかし、どうしても元に戻すことが叶わなかった魂は
ひとつに凝縮され、一族の中から選ばれた乳児の体内に宿された。

「カムロ」と名づけられた男の子は、
人でありながらドラゴンの幼生となり
長い年月を生きる宿命を負うこととなる。


「にしてもじゃ・・・」女性は溜息をついた。
「よく食べる御子じゃのう」

”復活のその日まで生き延びること”
それがカムロの使命。


喰ったじょ (=^‥^=)b

寝るじょ♪ (o_ _)o.。oOOグゥグゥ・。・。・。zzzZZZZZ


よく食べ、寝る子は育つと昔からいう・・・

彼は確かにその使命を果たしていた。
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天上界に上がり「RED STONE」を守っていた神獣の護衛天使たち。

あの事件ののち
生き延びたのはほんの少数であった。

もちろん、天上界に居場所などあるはずもなく
そのほとんどが下界でひっそりと暮らし始めた。

300年の時間が流れ
己が護衛天使の末裔であることを
忘れてしまった者がいた。

が・・・

火の神獣の復活、
天上界の6つの元素間の均衡こそを使命とする少数の者たちは、
あらゆる手段を使い
「RED STONE」の力を我がものとし始めた悪魔たちと戦うための
力を求めていた。

そんな折。

ここ数年
冒険者と呼ばれる者たちの中に
人並みはずれた戦闘能力や
治癒能力を持つものが多数、輩出されていること

彼らのほとんどが
幼少のころからこの大陸で育ったものではないこと

がシーフたちから報告されていた。


同じ、護衛天使の末裔であれば
一目でわかるはず。

では、彼らは?

もしかすると彼らこそ
話に聞く「護龍の民」ではないのか?

代々受け継がれた力が
ここ数年でとんでもなく強くなっているのか?

そう考えた護衛天使の末裔たちは
ギルドシステムを統括。
目ぼしい冒険者たちを試し、
結果、この仮説が正しいと結論づけていた。



そして、今日。

屋敷の周りには多数の警備がおり
建物への侵入には自動迎撃システムがあるこの建物。

さらに部屋自体が彼女の結界であるこの場所に
突然現れ、満ち足りるまで食べ続け
熟睡しているドラゴンの幼生。

今のカムロが望めば
どんな場所にでもいける。

ドラゴンと「護龍の民」の力が強くなっている。
この事実こそが
火の神獣の復活が近い証ではないのか?


( ̄ρ ̄)゚zzz まだ喰うじょ~~~

満ち足りた顔で眠るカムロに
身に着けていたガウンをかけてやる。


\(*^▽^*)/ ありりだじょ♪

パッチリと目を開けてお礼を言うと

(o_ _)o.。oOOグゥグゥ・。・。・。zzzZZZZZ

また眠りにつくカムロ。


「熟睡しているように見えても、そなたは・・・」


カムロが過ごして来たであろう
長い長い年月。
この無邪気な様子からは想像も出来ない
過酷な時間であったろうことに
想いをはせ、女性は何年かぶりに
涙をこらえきれなかった。

”もう、涙など
枯れたと思っておったが・・・”

自分の感情に驚きながら
カムロの周囲に守りの結界を張り
彼女はその場を後にした。
----------------------------------------------------
「大切なお客人がいらしておるのに、何事じゃ!」

明らかに不機嫌そうな主人の様子に
そこにいたものは震え上がった。

「お呼びたていたしまして、誠に
も、申し訳ございません・・・ですがDiolch様が・・・」

「ディオがどうしたのじゃ?」

いつの間にか彼女の手の中には水晶球。

「これはまた、なんと・・・」
破顔一笑というより
吹き出したといった方が近いだろうか、

胸の辺りまで伸びたストレートの銀の髪、
顔に刻まれた深いしわ
一見、かなりの高齢に見えるこの女性。

だが、その瞳はキラキラと輝き、
なんとも楽しげな表情を浮かべている。
精神年齢は無駄に若いようだ・・・

「良からぬ輩がつまらぬことを考えているようなので
泳がせてみれば・・・さすが我が一族の濃き血を継ぐ者
無事脱出した後はドラゴンの母となったか♪」

水晶球をポーンと放り投げる。
と、それはシャボン玉のように消えた。

「ディオを真ん中にあのドラゴンと客人、3人並んだら壮観じゃのう♪」

「・・・」 一同唖然。

「あの、いかがいたしましょうか?あまりに危険すぎるのでは・・・」

「かまわぬ、すておけ」

現れた時とは別人のような快活さで言い放つと
次の瞬間
その姿はなかった。

「・・・すておけって・・・全く、うちのお館様ときたら・・・」

溜息と失笑がその場に広がっていった。
-----------------------------------------------
悪魔たちによってもたらされた破壊を
再生する使命を担ったドラゴンたち

そして・・・

この破壊と創造のあまりに巨大な力が
宇宙全体を歪めてしまわぬように存在する
もう一つの力。

不老不死ではとの噂もある
調和を司る女性のみの一族。


天の星々の力に護られ、
国が滅びてもこの一族は生き延び、
新たな国を作り、それを支配する。

”ふう様”と呼ばれるお館様の年齢を知るものはこの屋敷にもいない。

この屋敷で生まれ、齢90になろうという侍女頭が物心ついた頃から
彼女の容貌はまったく変わらない。


「御子はよくお休みじゃのう」

部屋に戻ったふうは満足そうに微笑むと
胸にかけていたペンダントをはずし
テーブルの上に置いた。

ペンダントトップに埋め込まれた
破壊・創造・調和を表す
黒・赤・白の3つの石。

今は赤がきらきらと輝いている。

前にも
この輝きを見たことがあった・・・

カムロの横にそっと腰掛、
ふうは静かに眼を閉じた。
---------------------------------------------------
「お嬢様、ふうお嬢様」
半狂乱で叫ぶ侍女たち。

先ほどまで輝いていた太陽は闇色に包まれ
空気は凍りついていた。

ふうは指一本動かすことも出来なかった。

こだまのように聞こえる侍女たちの声が遠くなったように思えた時
目の前に白くもやもやとした物体が現れ、彼女を包んだ。

と、同時に意識を失う。



「目覚めなさい、ふう」


頭の中に直接響く声に、はっと意識が戻る。

ここは?

ゆっくりと起き上がる。


まだ、浮いているような感覚・・・

ベットから降り、スリッパを履こうとしたが
足がスリッパを通り抜けた?!

自分で自分に触れようとする。
が、これも空を切るだけ・・・

死んじゃったんだ私。

そう思った。


「心配するでない、そなたは生きておる」

暖かい声がふうを包んだ。

目を上げた先にいたのは・・・

胸の辺りまで伸びたストレートの銀の髪の
高齢の女性。


「おおばあさま?」

普段は屋敷の一番奥におり
滅多に会うことがない一族の長。

彼女が自分の祖母なのか
母の祖母なのか、ふうは知らなかった。

「ふうはいくつになった?」

「17でございます」目上の者に対する正式の礼。

頭の中は混乱し、泣き叫びたいくらいであったが
彼女が受けてきた教育と資質は
それを押さえ、貴婦人の卵としての振る舞いをさせた。

「良い子じゃ」

女性はふうを抱きしめた。

暖かく優しい気がふうを包み込む。

こらえていた涙が溢れ出す。

幼子のように泣きじゃくるふうの髪を
大切な宝物のように撫でながら
女性はふうの心に話し始めた。
----------------------------------------------------
天空に浮かぶこの国は
宇宙の調和を司る一族の国。

女性だけのこの国に生まれた者は
18になると地上に降り
”リトル”か”姫”として暮らし始める。

いつしか、この国の記憶をなくし
そのまま生涯を終える者がほとんどであるが
中には強くここの記憶を持ち続ける者
その者の子や孫の代で、この国の記憶が蘇る者がおり
ここ、ティルアノグは続いている。

「そなたも来年には地上に降り
普通の女性として生きることが出来たであろうに・・・」


宇宙を揺るがす破壊の胎動が
ティルアノグを闇で覆った。


と同時に創造を司る巨大な力が拡散し
ティルアノグに世代交代を促した。


「わらわが調和できた時間は終わってしまったのじゃ」

首からはずしたペンダントの先には3つのくぼみとつめ。

「先刻までここにあった貴石はすでに失われた・・・」

彼女がそのペンダントをふうの首にかけた途端
ふうの体は実態を取り戻した。

ウェディングドレス姿の可憐な少女。
つぶらな瞳は長い睫毛に縁取られ輝いている。

「このペンダントはそちを選んだ。
今からそちがこのペンダントを司る者。
祈りたまえ、願いたまえ、この宇宙に調和をもたらしたまえ」


物凄い勢いでめまぐるしいビジョンが
ふうの頭の中に流れ込んできた。
----------------------------------------
どこかで天使と悪魔が戦っていた。
赤い石が失われ、天使たち悲嘆にくれている。
勝ち誇る悪魔たち。

”これが破壊の始まりじゃ、
ふうよ
祈りたまえ、願いたまえ、この宇宙に調和をもたらしたまえ”

圧倒的な力で命ずる声に促され
祈るふう。

と、ビジョンは黒い塊となりふうの目の前で凝縮し
黒曜石よりも黒い石となった。

ふうが反射的に手を伸ばした刹那
それはペンダントに吸い込まれた。

呆然とするふう。

が、容赦なく次のビジョンが彼女を包む。


高く大きな山
木々が生い茂り、動物たちが暮らす・・・
が、よく見るとその山は微かに動いている。

そして
その山の大地は真紅。


一陣の風が吹くと
山の一角になにやら白と黒の細長いものが現れた。

黒い部分がギョロリと動く。

鳥たちが一斉に羽ばたき
動物たちが堰を切ったように山から逃げ出した。

メリメリと木々が根元から折れ始める。


慌てふためく民たち。

山が起き、ブルリと揺れた。


そこにいたのは一匹のドラゴン
丸めていた尻尾を伸ばし、高々と上げた顔は
雲を貫いていた。


己の周りに集まった総ての生き物に
何かを伝えると
ドラゴンは幾千万の光の塊となり
消滅した。


”これが創造の始まりじゃ、
ふうよ
祈りたまえ、願いたまえ、この宇宙に調和をもたらしたまえ”


ふうはすでになすべきことを悟り始めていた。

ビジョンは、ふうの祈りに答え
鳩の血よりも赤い石となり、ペンダントに収まる。

”良い子じゃ・・・”

いつの間にかその部屋にいるのはふうだけであった。

”そなたの体は「死んだふり」のまま、この天蓋の下(もと)に
護られるであろう・・・そなたは今より不老不死となる”

気がつくとまた、意識だけになり浮いていた。
目を凝らすとベットの上には少女の姿。

「えっ?!」

そこには確かに見紛うこともない自分の姿。

そして・・・
その隣に
同じようにウェディングドレス姿の自分よりも幼い少女がいた。

”わらわは13であった・・・それからどのくらいの年月が流れたのか・・・”
思念であるのにまるで溜息をついたように、あたりの空気が揺らいだ。

「おおばあさまが13歳・・・」

”ふうよ・・・我が一族の長となり、
祈りたまえ、願いたまえ、この宇宙に調和をもたらしたまえ”

「仰せのままに・・・」

心からの祈りが聞こえたかのように、
幼い方の少女の瞳から一滴(ひとしずく)の涙が流れ、
コトンと床に落ちた。

天空より落ちる雪よりも真白の真珠。

”これがそなたが司る調和の始まり・・・じ・・・ゃ”
プッツリと途切れた思念。

真珠がつぅーっ浮かび上がり、ペンダントに収まった瞬間。

ふうの体は床を踏みしめていた。

胸に輝くペンダントと同じくらいまで伸びた
ストレートの銀の髪の高齢の女性として・・・
-----------------------------------------
ペンダントの3つの石の1つ
見事なピジョン・ブラッド(鳩の血)ルビーが
暖かい光で周囲を照らし始めた。

”新たな司人にご挨拶申し上げる”

太くざらついた豪放な声。

”我は水の化身にして火を操るもの
人は我を『ドラゴン』と呼ぶ”

おおばあさまから受け継いだ体から
太古よりの膨大な記憶が
ふうの中に流れ込んでいた。

”大地を流れる大河が我が姿”

その記憶の中に
この声の主の姿があった。

”必要とするものには火を与え、
命が生まれ育つことが、我の喜び”

巨大な大河に手足と羽が生えたような
真っ赤な生き物。
大きな目、
大きな口、
その口から伸びているのは
舌なのか炎なのか・・・

”今、宇宙にもたらされし破壊により
我はこの姿にあらず。
が、あらゆる命と我はつながり
やがて、元の姿となろう・・・”

巨大で勇壮な姿が砕け、
声の気配が消えた。


断片的にふうの記憶に浮かんだものは、
卵、
石、
きらきらと輝く魂、
身長70cm、胴回り60cm位
申し訳程度に羽が生え、ギョロ目で耳が垂れ
手足が短く口がやけに大きく
そこから、これも真っ赤な舌を出した生き物。

これら全てが1つになったとき
『ドラゴン』は元の姿となる。


「やっと御子に会えたのう・・・」
振り返れば300年を越える歳月が過ぎていた。

永遠とも思えたこの時間にも
いつかは終わりが来るのだ。

「ま、この御子の食欲が満ちるまでは
『ドラゴン』の力はまだまだ足りぬということ」


カムロが寝返りをうった。

( ̄ρ ̄)゚zzz まだ喰うじょ~~~


『ドラゴン』復活までの道のりは
まだ長いようであった。
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カムロが目を覚ますと
ふうは顔を上げた。

手元には数枚の書類のようなもの。

「お目が覚めましたな、御子・・・」

(=^‥^=)ノいっぱい寝たじょ♪

σ(=^‥^=)元気だじょ♪

「それは大慶・・・おめざはいかがじゃ?」

(=^‥^=)ノ喰うじょ♪


イブニングティーの支度が整えられ
カムロはまた元気に食べ始める。


「御子はCymruの所におるのじゃな」

シーフからの報告書を読み終えたふうは
その様子を愛おしげに眺めている。

(=^‥^=)b

「Cymruは仕事をやり遂げたようじゃ。
もっとも、ワンコ酔いはする。罠にはかかる・・・
高位神官としては嘆かわしいことよ」

カムロのカップにお茶のおかわりを注ぎながら
ふうは溜息をついた。

σ(=^‥^=)Cymru好きだじょ♪

「わらわもじゃ」ふうは微笑んだ。


「この度の首謀者は”破壊”の悪魔ではないようじゃな。
それよりも・・・」

報告書では間違いなく主役の”破壊”っぷりをいかんなく発揮しているのはIという槍子。

報告によると
彼女が通った跡が無傷であったことがない。

「風圧でステンドグラスが吹っ飛ぶとは・・・」

と言いつつ楽しげなふう。



そして、もう1通の
Diolch誘拐に関する報告書。

「DとK・・・こやつらも、尋常ではないな」

結果的にはディオを救出し、護衛していることにはなるのだが、
やはり建物等の損壊、人的被害の規模が人間離れしている。

それだけ”破壊”を司る者たちの力が強くなり
本来はそれほど凶暴ではない者たちまで巻き込んでいるのか・・・


「こやつらの共通点といえば、なにしろ金がないことじゃが、
人は金に困ると”破壊”へ近づくのかのう・・・」


m(__)mごちそうさまだじょ♪

いつの間にかテーブルの上は完食状態。

「”創造”者は息災の様子、大慶じゃ」
ふうはカムロを抱きしめた。

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ここはハノブ。

先ほど、あの女性から指令を受けたシーフが向かった先には・・・

「よ~ぉ、いつもシケた顔だね」

まだ、日も高いというのに
とろ~んとした目のほろ酔いワンコ。

「仕事だ」
相変わらず表情ひとつ変えず、シーフはワンコにメモを渡すと、その場を立ち去った。

「へいへい・・・働きますか」
メモに目を通し、手にしていたグラスを空にして、立ち上がる。

「よお、マートン、もう引き上げるのか~」隣のテーブルから声がかかる。

そちらに向かい軽く手を上げると、マートンは千鳥足で酒場を後にする。

マートンの手の中には四角い物体が3つ、まるで生き物のように動いていた。

黒曜石・象牙・ルビーのサイコロ。

運犬マートン。

人は彼をそう呼ぶ。

強いのだか弱いのだか、つかみどころがないが
どんな状況も運だけで切り開いてきたと自他共に認める
ラッキーワンコ。

「で、今日の運勢は?っと」
ピンとはじかれたサイが空中で踊り
彼の手の中に戻った。

「って、いくらオレでもこりゃキツイぜ」

苦笑しながら街外れに向かうマートン。

街を出ると同時にブラー指をつけ姿を消す。

その瞬間、表情が一変した。

鋭い視線で辺りを確認しながら
物凄いスピードで走り始める。

酒場にいたほろ酔いワンコの面影はどこにもなかった。
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農民と職人がほとんどのこの村で
用心棒をしていたという親の顔は知らない。

マートンの両親が魔物との戦いで命を落としたとき
彼は2歳になるかならないかであった。

得たいの知れないよそ者の忘れ形見とはいえ、
見殺しにもできまいと引き取ってくれた鍛冶屋で
己の素性を知らずに彼は育った。

10歳になる頃には鉄を鍛えることを覚え
18歳になると大抵のものを修理できるようになっていた。

「お前は筋がいいぞ」

子供に恵まれなかった鍛冶屋夫婦はマートンを可愛がり
手先が器用で仕事も速いマートンを村人たちも重宝がった。

あの日までは---



空気は重くたちこめ、空に輝く満月。
いつもは青白き光を放つその姿が
今宵は深紅色。

村を阿鼻叫喚が包んでいた。

いつもは村はずれの森の奥に住む野犬の群れが
まるで何かに命令されてでもいるかのように
村を襲った。

その瞳は空に輝く月と同じ深紅色。
大きく口をあけ、だらだらと涎を垂らしながら
疾走する有様は明らかに狂気を帯びている。

「女、子供は村長の家に隠れていろ!!!」

鋤、鍬、短刀などを手に男たちが戦うが
野犬のスピードに武器は空をきるばかり。

「とうさん!」

マートンを庇うように短刀を振りかざしていた養父の肩に
野犬が噛みついた。

「逃げろ、マートン!」

噛み付いている犬の頭に刀を振り下ろし
なんとか払いのけた養父は肩を押さえながら叫んだ。

だらだらと流れる血
見る間に生気を失っていく養父の姿に
避難していたはずの養母が飛び出してくる。

次の瞬間、
両側から養母に飛びかかる野犬。

「かあさん!」

武器を持たぬ養母はそのまま動かなくなる。
傷を負った養父が必死で野犬を妻から引き離そうとする。
そこにまた数匹の野犬が飛びかかる。


大きな白い羽がマートンを包んだ。


次の瞬間、彼はまるで疾風のように野犬の中に飛び込み
養父母を抱きかかえると氷柱の上に立っていた。

「全てを育む大地の力よ、汝の生命力を我に分け与えたまえ!・・・アースヒール」

瀕死だった二人に血の気が戻ったことを確認し
マートンは振り向きざまに野犬の群れに向かって意識を集中した。

「宇宙(そら)よ、我が怒り聞き届けたまえ!」

降り注ぐ隕石が一瞬にして
野犬たちと村のほとんどを灰にした。
生き残った野犬たちの足が止まる。

再び白い羽に包まれたマートンは
己の周りに火の加護をまとい
月に向かって咆哮した。

口から伸びる牙。
盛り上がる全身の筋肉を茶色の毛が覆う。

手足には鋭い爪。

赤黒い月明かりの下
野犬の群れよりもはるかに禍々しき
狼人間の姿。

”ぼくはどうしたんだろう”

意識の奥で戸惑う自分を感じたが
視界に野犬が入ると
マートンは狩りに没頭していった。



黎明。


おびただしい数の野犬の死体。
メテオで焼けた家々から燻る煙。
けが人のうめき声。

そして・・・

全身にべったりを返り血を浴び
呆然と立ち尽くす狼人間。



朝日の下、その姿はあまりに凄惨であった。
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青年の姿に戻ったマートンの居場所は失われていた。

彼がいなければ、村は全滅していただろう。

だが、この村は異形を恐れた。
その力はいつか、村に災いを呼ぶと。


養父母はマートンに
彼の母はウィザード。父はウルフマンだったことを告げ、
形見の品として山登り杖ーと金剛石の牙、
3つサイコロを渡した。

育ててくれた2人が他人と知らされ、
マートンにとっては全世界だった村を追われ、
18で彼は天涯孤独の身となった。

あてもなくさまよい歩く生活。

鍛冶屋としての腕が彼を養ってくれたが、
満月の夜、
狼人間に変化する彼を受け入れてくれる場所はなかった。


流されるだけの生活が2年ほど続いた頃、
耳にした噂。

古都にギルドという組織が出来たらしい。
腕っ節に自信があればどんな奴でも加入でき、
くいっぱぐれることはない。

彼の心は決まった。
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辺境の村や町を過ぎると
マートン程度の鍛冶屋の能力では食べていけなくなった。

親の形見というサイコロを頼りに
半分自棄で飛び込んだ賭場。

これが面白いように勝てた。

大金と引き換えに、
賭場を出てしばらくすると、こわもてのお兄さんたちに
ナンパされることも少なくなかったが、
これも親の形見の杖でかけるヘイストは
お兄さんたちを振り切るのには十分だった。


が・・・


「ここどこだ???」

初めて訪れた町。
入ったのとは違うポタから外に出て
お兄さんたちにライトニングサンダーの贈り物。
振り返ることはせず、ヘイストが切れるまで疾走したため
自分がいる位置がわからない。

見渡せばこんもりとした森。
遠く聞こえるふくろうの声。
ねぐらに帰るのだろうか、上空を群れを成して飛ぶ鳥たち。

夜の帳が訪れようとしていた。

こんな時間に下手に動いて夜行性の獣にでも出会ったら悲惨である。

「ちっ、折角大金つかんだのに、野宿かよ」

舌打ちをして枯れ枝と枯葉を集め、ファイアーボールで火をつける。

焚き火を絶やさなければ、襲われる危険は少ない。

枝に止まっていた鳥をチリで凍らせ捕らえると
焚き火で調理し、ささやかな夕飯とした。

「明日はどっかの町で豪勢にいくぜ♪」

天空に輝く月はクレッセント。

マートンは焚き火の側に横になった。
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月を
黒い雲が覆った。

大気がねっとりと重くなる。

森のあちらこちらでもやの様なもの浮かび
ゆらゆらと漂い始めた。

微かに聞こえていたふくろうの声がピタリと止まり、
森自体が息を潜めているかのようであった。

なんの前触れもなく
焚き火がふっと消えた。

飛び起きるマートン。

「やばいな・・・」

すでに彼を取り囲むかのようにゆらゆらと揺れているのは
物理攻撃が全く効かない、紫に発光するイリュージョンたち。

「メテオシャワー!」

取り囲む輪が大きくなるだけで
火が消えればまたじりじりと近づいてくる。

「チリングタッチ」

一瞬青くなるが、凍らせるまでには至らず、
ダメージもない。

「だよな・・・」

マートンは肩をすくめた。

「賭場で運は使い果たしたかな」苦笑するしかない。

ヘイストで一度は突破したが、相手はあきらめてくれない。
あっという間にまた彼を取り囲みゆらゆらと揺れながら近づいてくる。

足元に落ちていた太い枝に点火。
松明のようにかざしながら、モンスターたちの鬼火を避けるのが精一杯。

「ちきしょう・・・でかい街で豪勢に飲み食いする前に死ぬのかよ!!!」

手にした枝が彼自身を焼きそうになり
マートンはそれをモンスターたちに投げつけ
もう一度へイストで逃げようとした。


「ごきげんよう」

張り詰めていた雰囲気を粉砕するような
間延びした声。



次の瞬間。

「己がいるべき場所にお戻りなさい、その魂よ、安らかに。
あなたのために祈りを捧げます。
ターンアンデット!!!」

白い霧のようなものが辺りを包み、
イリュージョンたちは煙のように消えた。
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自分の足元にかかるブレの暖かい光。
先ほどの小競り合いの傷も見る間に癒えた。

「すげぇや♪」

目の前のビショップにではなく己の幸運に感謝しつつ
マートンは素早く彼女を盾にし、PTを組んだ。

粗末な布の服に草履履き、
手にした帝王のホールもそれほどの代物ではない。

が、この状況ではこのビショップに頼るしかない。

「助かったぜ♪」

ご丁寧にミラーまでもらい、
ヘイスト・アスヒ担当を決めこみ
高みの見物マートン。

「あの・・・」

幾重にも重なって押し寄せていたアンデットたちが
半分ほどに減った頃、ビショップがくるりと振り返った。

「ん?」

「POTが切れましたの(涙目)」

「へっ?!」内心やばいと舌打ちをする。

「鞄から出す間、モンスさん、お願いいたします(泣)」

「ヲイ、お前、自動リロードつけてないのか!!!」
命の恩人をののしるマートン。

「申し訳ございません(大泣)」

「いや、泣いてる場合じゃないし・・・」

泣きながら鞄を下ろし、
まとめて引っ張り出せばいいものを1本ずつ封をきっては
”いただきます”と手を合わせて飲み干すビショ。

「待て、こら、お前、いいからこれ使え!!!」
自動リロードのついた指輪をはずし、ビショのそれと付け替える。

自分が人差し指につけていたそれは、ビショの親指でくるくるとまわった。

POTが勝手にベルトに装着されはじめる。

「あら・・・(感涙)」

すかさず立ち上がりまた詠唱を始める。

「こりゃいいや♪」

POTが自動供給されるようになると、マートンの仕事はヘイストのみとなった。

この状況下でターンアンデットをうちながらブレ・ミラーを切らさず
パーティピールまで飛ばしている。

「オレって本当にラッキーだ♪」

やがて訪れたトワイライト・・・

朝日が顔をのぞかせ始めていた。
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「おつあり♪」

陽の光が差し込むと同時に霧散したモンスターたち。


「お、お疲れ様でございます(涙目)」
ビショはその場にへたりこんだ。
「あの・・・」

「ん」

「私はCymruと申します」

「あ、ああ・・・」

「失礼ですが・・・ムナクソワルイイカサマヤロウ様でいらっしゃいますか?」

「・・・いや、それ、どう考えても名前じゃないだろうが!!!」

「あら(泣)」

「だから、泣くなって!そいつを探しているのか?」

なんとなく身に覚えがあるマートン。

「あ、はい・・・」


ビショの話によると

マートンが一儲けした町に巡回診察に訪れていたこのビショが
町外れで出会った男たち。

「ちきしょう、どこいきやがったあの胸糞悪いイカサマ野郎!」

血相を変えてわめいている3人の1人が彼女とぶつかった。

「どこ見てふらふらしとるんじゃ、このぼけ!!!」

「も、申し訳ございません(涙目)」

深々と頭を下げたCymruの目に飛び込んできたのは
3人の足の傷。

「あら、お怪我・・・(泣)」

3人に向かいフルヒールを連打。

「お・・・」男たちが止まった。

「こりゃいいや、ありがとよ」

「他にお役に立てることがありますでしょうか?」

「いや、こちとら人探しでね、ビショさんに頼むことはないよ」

「おら、だべってないでいくぞ!」

「あの・・・探していらっしゃるのは
”ムナクソワルイイカサマヤロウ様”でしょうか?」

のんびりとした口調で言い終わった頃には誰もいなかった。

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「でも、なんだかとっても一生懸命なご様子でしたので、
僭越ながら私もお手伝いしようとこの辺りをお探ししておりましたの・・・」

”どこまでお人よしなんだこいつ・・・(遠い目)”
マートンは溜息をついた。”ま、おかげで命拾いしたし、いいっか♪”

「オレの名前はマートン。古都に行くつもりがこんなとこで迷っちまってな。
残念ながら探し人じゃない。じゃ、オレ行くから」

しゃーしゃーと言い放ち、ビショの親指からリングを回収すると
彼女からはずした指輪は返さず、その場を去ろうとしたマートン。

「あら、古都ならお送りいたしますわ」

次の瞬間ビショの姿は片翼の天使となり消えた。

「えっ?!」

”コルいたします”頭の中に響く声。

マートンを闇が包んだ。

気がつけば見知らぬ町?ここが古都か?!

「コルレベルが低くて(涙目)・・・もう数回コルいたしますので
もうしばらくお待ちくださいませ(泣)」

その姿が消えるとマートンを闇が包む。
知らない場所・闇の繰り返し。

「お待たせいたしました」

マートンを取り囲むのは、
森よりもうっそうとそびえる建物。
津波のように押し寄せるざわめき
ゆきかう人・ひと・人・・・


辺境出身のマートンは目の前に広がる光景とコル酔(?)で
その場に倒れてしまった。
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